安倍首相トップセールス外交は、評価出来るか?
安倍首相は現在、トルコ訪問中である。国会開会中しかも平日の訪問であり、かって他の首相では経験したことがない異例さを感じている。この異例さは悪い方の異例さではなく、良い方の異例さである。それだけ総理のリーダーシップが発揮されている証拠であると思っている。
国会の審議は大切であるが、必ずしも首相が出席していなければ審議が出来ないということでもなく、担当閣僚、国会議員で審議を行い法案の内容を煮詰めることが出来るはずである。必要以上に首相が国会審議に足を取られ、重要な国際会議等に出席出来ない事の方がより国益を損じる場合があるからである。
安倍政権は6月に閣議決定した新たな成長戦略
「日本再興戦略-Japan is back-」
の国際展開戦略で、2020年には日本企業による海外でのインフラ受注額を現在の3倍にあたる30兆円に引き上げる計画を盛り込んでいる。首相ら閣僚が先頭に立つ「トップセールス」も毎年10件以上行うとしている。
少子高齢化が進み国内市場が縮んで行く中、日本が経済成長を実現するには新興国の成長を取り込むことが不可欠であり、インフラ輸出はその有力な手段である。
インフラ輸出については、欧米に加え中国や韓国も本腰を入れ、激しい受注合戦が繰り返されている。通常の技術で出来るインフラの受注合戦では、中韓にコスト競争力で負けてしまうため、技術力で勝ることに加え、官民連携の強化が求められている。
今回のトルコに於ける地下鉄のトンネル工事は、150年前から計画されていたが、技術的なメドが立たず先送りされてきた案件である。まさに日本の出番であり、技術力が必要とされる工事であった。
工事の方法は、巨大なコンクリートの筒を水深60メートルの海底に沈める方法で行われた。水深60メートルに加えボスポラス海峡の潮の流れは早く、上と下の流れが逆になる複雑さで難易度が高く、不可能に近い工事と言われてきた。
この難易度が高い工事を日本の技術力によって乗り切り、10月29日海底トンネルを横断する地下鉄の開通式典が行われた。首相は、この開通式典に出席することにより日本の技術力を世界にアピールしようとする意図があったと推測している。
現在IHIは、トルコ西部で全長3,000メートルの吊り橋を建設中で2015年の完成を目指している。トルコでは、これ以外にも大型のインフラ事業がめじろ押しで、参画を狙っている企業が多く、これらの受注のあと押しをすることにより、さらなるインフラ輸出の促進に向けてアクセルを踏み込もうとしている。
その証拠に、トルコの運輸相は高速鉄道整備に日本勢の参加を促し、さらに宇宙分野でも日本と協力を進める表明も行っている。
日本再興戦略にとって首相によるトップセールス外交は、今後益々不可欠であると感じている。その最たるものが、リニア新幹線である。日本国内に建設するよりも、もっと価値ある路線として見ているのが、米国の東海岸、西海岸への敷設である。
即ち、東海岸の場合は、ボストン→ニューヨーク→フィラデルフィア→ボルティモア→ワシントンDC間約800kmの路線、西海岸の場合は、サンフランシスコ→ロスアンゼルス→サンディエゴ間の約800kmの路線である。長期視野に立って是非受注に結びつけてもらいたいと思っている。