未曾有の怪物力士 「逸ノ城」 現れる、将来の見通しは?
大相撲界にかって経験したことのないような怪物力士が突如現れた。今秋場所活躍した逸ノ城である。今年の初場所幕下15枚目格付出でデビューしたばかりであるが、わずか4場所ほどで東前頭10枚目に昇進したのである。まだ髪は短く大銀杏は結えずザンバラ髪のままである。
秋場所が始まると、あれよあれよという間に先輩力士をなぎ倒し9勝1敗で進み、11日目大関稀勢の里と当たり
「はたき込み」 で大関を破った。そして翌12日目は大関豪栄道と当たり堂々と 「上手投げ」 で破ったのである。そして13日目はついに横綱鶴竜と当たることになったが、立ち会いの変化 「はたき込み」 で破り、41年振りの快挙となる新入幕での金星となった。
13日目全勝の横綱白鵬が大関豪栄道に敗れたため、11勝1敗となり逸ノ城と相星で優勝を争うことになったのである。そして、14日目はついに先輩力士の最後の砦である横綱白鵬と逸ノ城の対決となったのである。白鵬としては先輩力士の頂点に立つ大横綱であり、大相撲界の面目・意地にかけても勝たねばならない相手である。
新聞の言葉を借りれば、「ここで破れるようなことがあれば、番付社会の秩序とも言えるヒエラルキー(ピラミッド型階級制の秩序や組織)が崩れる」
ことになるのである。
しかし、やはりここは30回の優勝を果たしている百選錬磨の大横綱白鵬、対処の仕方は充分に心得ていて、立ち会いで左上手をガッチリとつかみ、相手には上手を与えない体勢を作り、右下手も引きつけ、左からの出し投げで横転させたのである。横綱相撲で貫禄をみせてくれたことで、ホットしたと言うのが正直な気持ちであった。
今だかって、これだけ早く出世し大関横綱を次から次へと破って行った力士を経験したことがなかった。相撲内容もとても力強く、堂々としたもので決してフロック勝ちではなく、今年初場所初土俵である力士とは想像出来ない内容であった。
稀代の大横綱と言われた大鵬、現在の白鵬にしても入門当時は80kg前後の体重で稽古を積み重ね徐々に体重を増やして行き、確固たる大横綱の地位を築いて来たのである。
所が、逸ノ城は入門時いきなり身長192cm、体重199kgという角界随一の均整のとれた体格である。これに匹敵する体格の持ち主といえば、既に引退したバルトである。バルトは、身長198cm、体重189kg、であり、逸ノ城は身長で6cm劣るが、体重で10kg勝るのである。もう一人現役力士で碧山がいる。碧山は、身長192cm、体重197kgであり、逸ノ城とほぼ互角の体格である。
バルトは将来を嘱望され横綱になると見ていたのであるが、怪我が多くその夢を果たすことなく角界を去ったのである。現役の碧山は、前への突進力はあるが横に弱くいなされると脆く、将来大関横綱という地位を獲得する見込みはないと見ている。
果たして、逸ノ城は今後どう出世して行くのであろうか?プロの角界、そんなに甘くない世界であり、今後先輩力士による稽古場での研究が進み、弱点が洗いざらい徹底的に暴露されてくると思われる。
次の場所から、逸ノ城はこうした先輩力士の弱点研究に対してどう対処して行くのであろうか?先輩力士の挑戦をことごとく跳ね返し好成績を残し、一直線に出世街道を上って行くのであろうか?そして、近いうちに横綱になれるのだろうか?
逸ノ城は現在21歳5ヶ月であるが、大鵬は21歳3ヶ月で横綱になっている。そして白鵬は22歳で横綱になっている。大横綱になるには、決して歳が若いと言える年齢ではないのである。
来場所番付はおそらく、前頭筆頭あるいは小結当たりまで昇進すると思われる。この位置であれば、全ての幕内上位力士と当たることになるので、本当の真価が問われる場所になる。来場所どのように活躍するのか、この結果によって逸ノ城の今後の行方をある程度、占えるのではないだろうかと推測している。
大相撲界も、最近将来を嘱望される若い力士が次から次へと誕生してきて場所を活気づかせ、楽しいものにしてくれている。逸ノ城を筆頭に、遠藤、大砂嵐、照の富士、常幸龍、勢、と言った面々である。これらの力士の活躍により国技大相撲が益々発展して行くことを願うものである。我が故郷の出身隠岐の海にも、もう少し稽古に精を出し頑張ってほしいと併せ願っている。