大阪都構想は是か非か・・・長期的視点で判断すべき!
大阪市選挙管理委員会は3月20日、大阪市を特別区に分割し再編する「大阪都構想」の是非を問う市民対象の住民投票を4月27日に告示し、5月17日に実施する日程を決めた。住民投票で賛成票が反対票を上回れば、大阪市は廃止され、5つの特別区が新たに設置される。
私は大阪市民ではないので大阪都構想に対する住民投票の権利は持っていない。しかし、大阪府民であり、今後の大阪がどうなって行くのかについては無関心ではいられないのである。
大阪都構想とは、大阪市と大阪府の二重行政による無駄を排除して、豊かな大阪を作ろうと大阪維新の会が中心となって進めているものである。即ち、政令指定都市である大阪市を解体し、5つの特別自治区を作り、全体としては大阪都として一人の知事が管轄するようにしようとするものである。ワン大阪構想である。
大阪市と大阪府の勢力争いは、過去何十年と続けられその結果、同様な施設がダブルで作られ、事業がダブルで行われ、二重行政と呼ばれるようになったのである。
都構想に賛成派、反対派の争いは、住民サービスに関するもの、新設される特別区の税配分に関するもの、特別区設置にかかるイニシャルコストに関するもの、二重行政解消により浮いてくるコストに関するもの、等々が大雑把な争点である。
これらの争点はいずれも短期的なメリット、デメリットについての論争であり、どちらか一方の言い分が正しく、他は正しくないと判断するのは難しく、私の見方はイーブンであるとみている。
本来の大阪都構想の目的何か? もっと長期的な視点に立って考えるべきであると思っている。現在、大阪市・大阪府が抱える問題点は何か、それは東京一極集中による大阪の相対的な地盤沈下である。
一般庶民は気がついていないかもしれないが、大阪の存在感は薄れる一方である。活気ある大阪を取り戻すためには何をすれば良いのか?という視点に立って大阪都構想を考えるべきであると思っている。
かって、大阪は日本の経済の中心であった。1950年(昭和25年)~1960年(昭和35年)の高度経済成長期には、御堂筋沿道でビル建設ラッシュがあったのである
1970年(昭和45年)~1980年(昭和55年)大阪万博開催に伴い、一等地であった御堂筋には、多くの金融機関が集積し、1980年代にそのピークを迎えた。とくに、淀屋橋~本町間には都市銀行、全国の地方銀行の本支店が集まり、関西一のビジネスゾーンとして繁栄した。当時は、御堂筋にオフィスを構えることがステータスであったのである。
これら昭和の大阪の繁栄を築く礎となったのは、第7代大阪市長
「関一(せきはじめ)」 の大規模な都市計画事業により建設された御堂筋に負う所が大きかったのである。「関一」 は、パリをはじめとするヨーロッパの都市を模範として、大阪発展百年の大計として1921年(大正10年)に御堂筋建設計画を打ち出したのである。
1930年(昭和5年)御堂筋の拡幅工事に着工、幅員44m、電柱の完全地中化、地下鉄同時開発、という当時では類を見ない壮大な工事であった。1937年(昭和12年)御堂筋完成、4列のいちょう並木が植えられ、ゆったりとした歩行者空間は当時の人々を驚かせたのである。
翻って、大阪都構想についてみると、長期的視点即ち大阪100年の大計という観点に立って考えて見ると大阪都構想は必要である。現状のまま、大阪市と大阪府が併存する形では将来の発展の見通しは立たないのである。
大阪都というワン大阪にすることによって、将来発展の図式は描けて来るのである。ワン大阪にすることによってどんな将来展望が描けるのかといえば、そのお手本となる例は海外にあるのである。
その一つの例が大ロンドンである。大ロンドンは、昔のロンドン市の周辺に位置した33の市や区を統合し大ロンドンを作ったのである。以前は、市や区で行政がバラバラであったが、一人の市長になり、いろいろな改革が実現することになったのである。この詳細は、テレビ大阪の番組、「池上彰の世界を知れば大阪が変わる」
で詳しく解説されているのでここでは述べない。
もう一つの例は、シンガポールという都市国家である。シンガポールという都市国家は、絶えず改革をし続けて来た国である。改革の手を緩めるという事は、国家存亡の危機に繋がるのである。学ぶべき事柄は、渋滞を防ぐ交通政策、チャンギ国際空港の改革(ジュエル・チャンギ・エアポート計画・・・テーマパーク・ショッピングモールの機能を持たせる)を進め絶えず世界No.1の地位を維持して行こうとする政策、IR(Integrated Resort・・・統合型リゾート)を中心とした観光政策、これらの詳細についても、テレビ大阪の番組、「池上彰の世界を知れば大阪が変わる」
で詳しく解説されているのでここでは述べない。
海外の例を参考にして、大阪では何をやるのか?であるが、私はグランド・デザイナーでもなんでもないので的を射たアイデアであるかどうかは別として、こういうことが考えられるのではないかと思っている。
1.関西国際空港を海外から関西への入口、のみならずハブ空港としての空港機能を充実させる。それこそチャンギ空港を参考としてアミューズメント機能を追加し、単なる待合室というのではなく、長時間居っても退屈させない場所にして行く。ハブ空港化するに当たり必要なら滑走路を更に1本追加し、ターミナルも増やす。
2.既に、橋本市長・松井知事により提案されている夢洲にIR・・・統合型リゾートを建設する。この中には、ホテル、劇場、会議場・展示場、博物館、ショッピッングモール、アミュズメントパーク、カジノ、等々が含まれる。全体構想としては、成功しているシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズを参考として行う。カジノ運営のノウハウについても学ぶ。
3.関西国際空港、夢洲IR、大阪都心(梅田・新大阪)、京都、を高速鉄道(リニア)で結び、短時間でアクセス出来るようにする。建設までに相当時間がかかるので、当面関西国際空港と夢洲IR間を高速ホーバクラフトで結ぶ。
4.交通戦略構想については、大ロンドンの例を参考に、脱車社会を目指す。中心部を走る車に混雑税を課す、地下鉄を24時間化する、自転車専用の高速道作る、レンタサイクルを整備・多数の駐輪場を建設してどこでも自由に返却出来るようにする。
等々が素人なりに考えた案である。こうした案を実現しようと思えば、大阪都構想は必要である。今回の大阪市民による投票で否決されるのであれば、ほぼ未来永劫に実現不可能であると思っている。そして、過去何十年と続いて来た二重行政解消という試みも一瞬にして水泡に帰すのである。
一方で、大阪都構想は統治機構改革の一歩でもある。大阪都構想に続くのは、道州制への移行である。道州制への移行の前哨戦として、大阪都構想を是非実現させ、成功させることが重要であると考えるのである。
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