金星探査機「あかつき」がくれた教訓・・・見習う価値がある
2010年5月21日、金星探査機
「あかつき」 は、種子島宇宙センターから打ち上げられ、約7ヶ月後の12月7日に主力エンジンを逆噴射して減速し、金星周回軌道へ入る予定であった。所が、12分間噴射する予定が2~3分にとどまった。ここのため、予定の軌道に入ることが出来ず、金星を通り過ぎてしまったのである。
この時の模様はテレビ中継された。主エンジンが逆噴射され、「あかつき」
が一端金星の陰にかくれ、次に出て来た時には金星の軌道に乗っているはずであったが、通り過ぎてしまったのである。当時、すぐには何が起きているのか分からず、何故?と悔しい思いをしながら見ていたのである。
原因は、後の調査の結果、“主エンジンに燃料を送り込むパイプにある
「逆止弁」 と呼ぶバルブが開かなかった” という故障に起因したのである。
金星の軌道へ投入するチャンスは唯一度だけである。従い、ここで失敗すると次チャンスが巡って来るのは5年後の2015年と計算し予測されていた。しかし、当時の思いとしては、「言うは易く行う難し」
であった。何故ならば、この5年間に 「あかつき」 は太陽の回りを9周してやっと、金星軌道へ再投入されるチャンスが来るからである。
5年間と言えば、宇宙の時間感覚で言えば瞬時かもしれないが、地球より内側の軌道を5年間9周も飛行すれば、太陽から受ける熱による機器の劣化、燃料の消耗、設計寿命の4年半を過ぎている、等々ハザードは予想以上に多いのである。
兎に角、当初の予想通り、金星の軌道に再投入出来るという
「千載一遇のチャンス」 がやって来たのである。このチャンスを生かすも殺すもJAXA次第である。
JAXAはこの5年間、「千載一遇のチャンス」 を生かすため綿密な計画を立てて臨んだのである。即ち、1.主エンジンが故障している為、姿勢制御用の小型エンジン4機を同時に逆噴射させる、2.小型エンジンは推進力が主エンジンの1/5以下でありこれを補うため、20分28秒という長い時間噴射させる、3.何万通りかの軌道計算を行い、最適な軌道を見つけこの軌道に乗せる、4.手順を細かく規定し手順通りに、12月7日午前8時51分に逆噴射を行う、等々を極めて的確に行ったのである。
その結果、遂に軌道投入に成功、金星探査機 「あかつき」
が教訓を与えてくれることになったのである。即ち、一度失敗しても次に来ると予想される 「千載一遇のチャンス」 を狙って、綿密な計画を立て、手順を間違わずに実行すれば、名誉挽回 or 汚名返上 を果たすことが出来るということである。
日本の宇宙探査は、ハヤブサ1号機の如く、数々の困難に遭遇しながら叡知を振り絞り、困難を乗り切り解決して成功に導いて来た経験がある。今回の
「あかつき」 についても、不撓不屈の精神で事に当たれば道が開けるという事を教えてくれたのである。
振り返って、我々の人生に於いてもこれと同じような事が言えるのではないだろうか?長い人生その行く先には岐路が幾つもあり、中には千載一遇というチャンスもある、ここでそのチャンスを掴めるか否か?は人生に賭ける真剣さによって決まるのではないだろうか?運によるという人もいるだろうが、運を掴むことが出来るのもそれを掴む資質があるからだと思っている。
バブル経済崩壊後の不況期に新卒者だった人々は、就職氷河期世代と呼ばれ、多くの人々が正規の軌道
(正規労働者) に乗ることが出来ず、意図しないな軌道 (非正規労働者) に乗っているのである。
現在この世代は40歳代に達し、35~44歳の壮年非正規労働者が増加している。正社員を望みながら機会に恵まれなかったこの世代は2014年時点で70万人に上るという。
一億総活躍社会という漠然としたスローガンが叫ばれているが、まず最初に就職氷河時代に遭遇した ロスト・ゼネレーション(別名:貧乏くじ時代) と呼ばれる世代に対して再度チャンスを与えることから始めたら良いのではないだろうか?「あかつき」 の教訓を糧に是非チャンスを掴んで欲しいと願うのである。