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イーロン・マスクという起業家をご存じでしょうか?私は、最近知りました。9月8日、米国の電気自動車メーカーであるテスラ・モーターズのCEOとして来日し、テスラ・モーターズの第二世代の車
「モデルS」 を購入した日本の顧客に納車したのです。納車記念式典にあたりプレスイベントが行われ、そのニュースで知りました。
更に9月16日、NASA(米航空宇宙局)が2017年の初飛行を目指す有人宇宙船の開発を2つの米企業に託すことを発表しました。選ばれたのはスペース・シャトルの開発など実績のある航空宇宙大手ボーイング社と、ベンチャーのスペースX社という対照的な組み合わせの2社となりました。NASAは民間の競争原理を導入し、ロシアなどとの世界的な開発競争で再攻勢をかけるとしています。
ボーイング社は旅客機の生産など良く知られた大手企業ですが、スペースX社は2002年にイーロン・マスクにより設立されたベンチャー企業であることを知り驚くと共にイーロン・マスクという男に非常に興味を抱いたのです。
イーロン・マスクについて調べて見ると、いろいろな表現で呼ばれているようです。天才起業家、天才経営者、EV(電気自動車)とロケットの革命児、完全無欠のスーパーマン、ITの革命児、等々です。所が、イーロン・マスクのやっている事業がまだ海の物とも山の物とも分からないうちは、「ほら吹き」 呼ばわりされていたようですが、次々と実現するに従って「レジェンド(伝説)」
に変わり、影響力はどんどん増し、今やイーロン・マスクは世界で最も目が離せない経営者と呼ばれるようになって来たようです。
確かに、現在イーロン・マスクが手がけている、EVとロケットは他社の物とは 次元が違うくらい先を行っている と感じています。これは後で説明するとして、私がイーロン・マスクに最も心酔するのは、彼の哲学というか、コンセプトというか、明確なビジョンと確固たる信念のもと、リスクを恐れず物事を進めていることです。
彼の目的は、二つの夢の実現です。一つは、地球環境を守るため持続可能なエネルギーを実現すること。二つ目は、人類の新しい環境を求めた、宇宙への旅立ちである。いずれも、私財を投げ打って、人類のために自身を捧げるというミッションです。このため、彼は広義のデザイナー(設計を含む)であり、そして筋金入りのエンジニア(自分でそう言っている)として、週に100時間以上働き続けているのです。
EV 「モデルS」 について
それでは、テスラ社が開発した、EV 「モデルS」
について見てみると、現在日本で発売されているEVとは値段帯が違うため単純には比較出来ないのですが、日産のリーフ、三菱のi-MiEV、の場合、1回の充電で走行する距離が、160kmに対して「モデルS」 は400km(時速105km走行)である。充電時間は、200Vで5~8時間に対して、スーパー・チャージング・テクノロジーにより40分で出来るのである。参考ですが、「モデルS」 は時速29kmで走行し676km走った記録もあります。
性能は、「モデルS」の場合イーロン・マスクの説明によると、車の反応性が非常に良く、運転していると車に溶け込んで一体になったかのように感じるほど、ターンや加速が超能力でも使っているかのように瞬時に出来るそうです。ガソリン自動車には無理で、本質的な違いのようです。運転してみて初めて分かるとのことです。ちなみに、時速100km迄の加速時間は4.4秒です。同じ電気自動車である、リーフ、i-MiEV、でもこのような反応性を示すのかどうか?聞いたことがないので分かりません。
見栄えも、日本の車は軽タイプの箱形に対して、流線型でスポーツカータイプのセダンである。値段は、日本のモデルは約250万円、「モデルS」 は約750万円です。「モデルS」、と スーパーチャージャー の写真 があります。文字をクリックすると繋がります。
スペースX社製スペース・シャトルについて
次に、スペースX社が開発している、スペース・シャトル後継機について見てみると、ボーイングの宇宙船は、1969年に初めて月面着陸に成功したアポロ宇宙船のように帰還時はパラシュートで降りるタイプであり、基本的に使い捨てである。一方、スペースXの宇宙船は、エンジンを逆噴射して減速しながら地上に着陸し、再利用可能である。着陸後、すぐにでも再利用できるとしている。
NASAが開発した、スペース・シャトルは再利用可能でしたが、再利用される部分も次の飛行までに9ヶ月と1万人の人手をかけて修理する必要があり、結果としてスペース・シャトルは1回の打ち上げに1100億円もかかり、どう見ても割が合わなかったのです。
宇宙船を打ち上げるロケットは、ボーイングはロシア製エンジンを積むロケット 「アトラスV」 を予定していますが、ロシアは5月に輸出停止を突然表明し、ロシア頼みの危うさが浮かび上がって来ています。一方、スペースXは、自社開発の 「ファルコン9」 を使う予定です。「ファルコン9」 では、製造コストを約75%削減、機体、エンジン、電子機器、打ち上げの運用、等々革新したことは山ほどあるようです。従い、「ファルコン9」 の打ち上げ費用は、約60億円で他社のほぼ半額に近い安さを実現しています。ちなみに、日本の最新鋭ロケットH2Aの打ち上げ費用は、約100億円かかっています。
更に、イーロン・マスクが問題であると指摘しているのは、現在のロケットは全て使い捨てであることです。現在、使用されている輸送手段、飛行機、電車、自動車、バイク、馬、等々全て再利用可能であるがロケットだけが例外である。宇宙に進出する文明を確立するためには、解決されなければならない問題であるとしています。
スペースXは、既にグラスホッパー・テスト・プロジェクトと呼ぶ、打ち上げロケットの各段が打ち上げ場に戻って来る実験を繰り返し行っています。これがうまく行けば、打ち上げ後数時間以内にまた打ち上げが出来るという本当の再利用可能ロケットとなります。ロケットに使用する燃料代は、全体の費用の0.3%程に過ぎないので、再利用可能になれば、宇宙飛行のコストは1/100迄に改善されるとしています。
イーロン・マスクは火星移住の夢を持っていて、これの実現のために現在そのステップを着々と進めて行っているという状況です。NASAから、次世代のシャトル後継機開発のお墨付きを得たことにより、開発費約2,800億円が投じられることになったため、開発により弾みがつくことになるだろうと思っています。
その他のプロジェクトについて
イーロン・マスクは、EVとロケット以外に、ソーラーシティーという太陽光発電の会社も経営しています。これは、彼の持論である持続可能エネルギー社会を実現するために必要であるとの観点からです。そして、彼は20年以内に発電の主力は太陽光になると予言しているのです。
EV 「モデルS」 に使用する充電スタンドはスーパーチャージャーと呼ばれ、太陽光発電を利用した充電設備で有り、米国の主要道路沿いに設置されていて、「モデルS」
のオーナーは無料で使用出来るようになっています。日本でも、スーパーチャージャーは2015年までに日本中に設置される予定です。
更に、驚くべきことは昨年8月に、夢の超高速列車
「ハイパーループ」 構想を発表しました。これは、現在カリフォルニア州で検討されている高速鉄道、総工費約6兆8000億円に対するアンチテーゼとして発表されたものです。現在計画されている高速鉄道は建設費が高い上に、遅過ぎて、実用的ではないと批判しているのです。
ハイパーループは減圧(100pa程度)されたチューブ(管)の中を乗り物(ポッド)が空中浮上(非接触)して進むシステムです。最高時速は1,220kmでロサンゼルス-サンフランシスコ間(全長610km)を30分で結ぶものです。建設には、期間が20年以上で全体の建設費用見込みは7,100億円です。チューブの建設費用が主要部分を占め、車体の経費は合計で1,100億円未満です。従い、現在検討されている高速鉄道と比較すると、コストが約1/10程度、工期も短縮されることから注目されているようです。
現在、「ハイパーループ」については、別の会社 「ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジー」を作り、ここで2015年始めまでにプロトタイプ(試作機)を完成させる予定とのことです。実現すれば、まさに夢のような話です。是非注目してみたいと思っています。
このように、イーロン・マスクは一人で幾つものプロジェクトを運用(経営)するという、まさにスーパーマン的な活躍をしています。その秘伝(ノウハウ)はどこにあるのか?という質問に対して、考えるためのフレームワークとして物理学をあげています。何か新しいことをしようと言うときは物理学のアプローチを使う必要があります。即ち、原理と推論つまり物事を本質的な真理まで煮詰めてそこから推論するという事である、と答えています。ちなみに、彼はペンシルニア大学で経済学と物理学の学位を取得しています。
イーロン・マスクは、アップルのスティーブ・ジョブズ、マイクロソフトのビル・ゲイツ、を継ぎ、そして上回る起業家になるのではないかと思っています。何よりも素晴らしいのは、金儲けに執着するのではなく、地球を救おうという観点に立って物事を進めていることです。頑張れ!イーロン・マスク